この映画とは、巡り会うべくして巡り会ったと思っています。
もちろん、今だからいえることなのですが…。友達の弟が、ことりあえず、せっかくだから観てみよう…と軽い気持ちの映画のVIDEOを持っていて(ちょっとヤンキーです…死語?)、遊びに行ったときに、みんなで鍋パーティをしたんですが、その時に、その弟がこのVIDEOを観ていました。私の気持ちは“鍋”のほうに向いてましたから、なんとなくのBGMで…というのが最初の出会いでした。
帰りに、VIDEOを何本か借りて帰りました。翌日、ひとりであらためて観たんです。この『大阪最強伝説 喧嘩の花道』を…。「な、な、なんじゃこりゃー!おもしろいじゃないかー!」というのが、あらためてじっくり見た最初の感想でした。全然、期待していなかったのです。で見始めました。でも、この時に監督うんぬんなどということは、まったく考えてはいません。内容がおもしろいと思っただけです。
しかし、その後、レンタルビデオを見に行って、何本か借りた中に、“監督 三池崇史”という名前を、また見つけてしまったのです。
しかも、『喧嘩の花道』とは、まったく違うものであったのですが、そちらを観て、あらためて、興味津々になってきたのが、三池ウォッチャーの始まりでした。ですから、私の三池ウォッチャーとしてのスタートは、この『大阪最強伝説 喧嘩の花道』なのです。今でも、なにか気分がへこんだ時は、なぜかスカッとできるこの映画を観るんです。もう、主要登場人物のせりふまで覚えてきているほどです。
■あらすじ
パトカーの回転灯のアップから始まり、逃げている若い男と紙包み、いっしょにいるのは怪しい東洋人…という始まり方をします。これだけだと、とてもハードな裏社会の映画か…と思ってしまいがちですが、そのあと、コテコテの大阪弁が炸裂する電気屋前、電気屋の主人は衛星チューナーの売り込みのためか、「衛星放送でっせー!」と呼び込みをしています。衛星放送の画面では、東京ドームで格闘技の試合が始まろうとしています。因縁の対決です。電気屋の前には、ボクシングの試合を観るための人だかり、どちらが勝つか賭けをしています。まさに、昭和を感じるシーンです。
そして、ドラマは過去へとさかのぼり、学ランを着た威勢のいいお兄さんたちの青春グラフティが始まります。いきなり、線路脇の路地での喧嘩シーンです。リーゼント、パンチパーマにハイウエストのゆるーいズボン、長ランの男子たちです。まだ、短い学ランではなく、それ以前の長い学ランの時代設定です。革靴のつま先はあくまでも尖っています。女性は茶髪に短いセーラー、くるぶしまでくるような長いスカートです。今はまったく見かけなくなった学生鞄ですが、これもぺったんこの空っぽ、まるで板のようです。
浪速西高の玉井カズヨシ(やべきょうすけ)は、ある時、天南高の浜田タケシ(北村康)という喧嘩が強いすごい男がいると聞いて、「決闘じゃ」と学校に尋ねていくところから、物語が進んでいきます。喧嘩、喧嘩に明け暮れながらも、それぞれが、少しずつ成長して、なにかにけりをつけ、なにかを選んで進んでいく姿が描かれています。
懐かしく過去が蘇る人もいるのではないでしょうか。かく言う私も、お風呂でお湯を通したり、布団針で鞄のマチの部分を縫い縮めたり、入浴時におしりの下に引いたりまでして、鞄を潰していました(おはずかしい…でも懐かしいです)。
・原作 二宮清純
・監督 三池崇史
・脚本 NAKA雅MURA
配役
・カズヨシ やべきょうすけ
・トシオ 奥田智彦
・タカシ 北村康(北村一輝)
・リツコ 今村涼子
随所に、コテコテの笑いや、ボケと突っ込みの絶妙なシーンが盛り込まれています。登場人物のせりふの一言、一言が、あるいは、お笑い番組を観るより面白いかもしれないと感じさせる絶妙なやりとりばかりで、思わず、ニヤッとしたり、吹き出したり、声を出して笑いたくなるシーンがあります。つくりごとの映画ではなく、登場人物が今もどこかにいるかのように、生き生きとしています。
しかし、その間には、祖母とカズヨシの関係、タケシの家庭環境や妹との関係、空手の師匠との出会い、玉井とトシオの友情。トシオの恋、父親の事情など、ただ、単純に喧嘩に明け暮れているわけではない、繊細な若者達の群像が描かれており、はき出したい何かを拳にぶつけて行く青春のストーリーを感じることができます。意味もなく、むしゃくしゃしたり、なにかが鬱積していたり…と、どんどん大人の世界が見えてくる年代の、様々な葛藤も、邪魔にならない重すぎないバランスで、主体として幅をきかせない程度に、彼らのバックボーンとして、しっかり存在しているのです。
強いヤツがいると聞けば、すぐに喧嘩を挑みに行くという単純明快な行動をとり、負ければ勝つまで何度でも、喧嘩を挑み、その中で出会う様々な出来事や人たちに影響されつつ、少しずつ大人に近づいていくという、まさに青春ストーリーです。
しかし、“青春”という言葉を使うことが照れくさくなるような、やんちゃなストーリーであり、ベタベタな青春ものではありません。軽快なリズムで進んでいきますが、一般的に、世に溢れているピュアを全面にだした青春映画といわれるものよりも、むしろ、こちらが、青春の等身大と思えるようなシーンが盛りだくさんです。
昔、やんちゃだった人は、そっくりそのまま懐かしさに浸ることができるでしょう。そうでなかった人も、懐かしく学生時代を思い出せます。もちろん、現役の「好青年」は、固いこと抜きで楽しく観ることができるでしょう。(好青年…という言葉は、劇中で、カズヨシの祖母が、トシオを呼ぶときに使っている呼び名でした…ここも意味が深いです)カズヨシを好きな女子高生・リツコ(今井涼子)に思いを寄せるトシオの葛藤、父親、コンプレックスなど、流されていく人生や、リツコのその後など、印象深く残ります。彼らのバックボーンを観る上でベースにおかれますから、その上での笑いということで、見終えたあとも、重くはないけど、ただのヤンキー高校生の青春グラフティという、数ある中の同じカテゴリーの作品とは一線を画す作品であると感じるのかもしれません。
注目すべき点として、やべきょうすけ演じる玉井和義(タマイカズヨシ)の天敵、天南高校の浜田武士(ハマダタケシ)役は、まだ、本名で出演している北村一輝さんです。この作品以前にも何本かの作品に出演している北村一輝さんですが、実質的には、この作品が、世に出るデビュー作といってもよいのではないでしょうか。「三池監督との出会いは、自分に大きな影響を与えている」と、ご本人も言っているようです。最近は、ソフトな優しい男の雰囲気の役柄も多いように見受けられますが、『喧嘩の花道』で、北村一輝が演じるタケシは、最高にいいキャラクターをしています。もともと、大阪出身らしいですが、コテコテの関西弁に、学ラン、パンチパーマにそり込みが入り、眉毛も激細の北村一輝です。これは、最近のイメージしか知らない人にとっては、かなりのレアものでしょう。北村一輝さんの“一輝”という名前も、三池監督が名付けの親となっているほど縁が深いようです。
最近では、劇場版『龍が如く』で、監督と主演という関係でした。この作品で出会った二人ですが、北村一輝さんも、やべきょうすけさんのように、以後、数々の三池監督作品に登場してきます。三池監督作品で観る北村一輝さんは、個性的で力のある目力が、ふんだんに発揮されているように思います。
『非常にばかばかしい映画なんです。単純明快な映画なんです。でも、切なくて甘酸っぱさもある映画なんです。ずっと印象に残るんです。懐かしいんです。面白いんです。見ていて、思わず、「バカか…」と吹き出してしまうシーンが満載です』
このように単純に、箇条書きで語れるのが、この作品の良さでもあると思っています。しかし、その実、語ろうと思えば語り尽くせないほど、細かい部分に、アイデアが盛りだくさんなのが三池作品です。クルクルパーマのワッフルみたいな髪をしてサングラスをかけ、居酒屋で飲んだくれ、トシオの父親をバカにした話題で盛り上がっている日雇い労務者役をしているのは、なんと、三池監督なんです。ここでは、役者名“三池ドコモ”として出演しています。とても自然な演技で、俳優が本業のように思えてしまうほどです。トシオに刺されるシーンもすばらしい演技でした。
1996年の作品ですが、元プロレスラーの前田日明さんや、元プロボクサーでもあった俳優の赤井英和さんらの、高校時代のエピソードなどにヒントを得た、二宮清純さんの原作小説を映像化したものだそうです。原作をかなり崩した形で作られているそうで、いわば、おもいっきり、三池監督カラーで作られたといってもいいのではないでしょうか。脚本は、NAKA雅MURAさんですが、三池監督の作品にはよく、登場する脚本家です。せりふには、むしろリアルであって痛快なテンションがあり、切り返しのテンポがよくて、大好きです。
三池崇史監督は、この作品以前にも、映画だけでも20作品近くに関わっていますし、監督をした作品は、オリジナルVIDEOなどを含めれば、さらにその数は多くなります。残念ながら、まだ、この作品以前に監督されたものは未見なのですが、その中にはいくつか観てみたいと思っている作品もあります。
しかし、なんといっても、この“青春グラフティ”とでも言えそうな、『大阪最強伝説 喧嘩の花道』は最高です。現在公開されている『クローズZERO』と同じような年代を主人公に扱った映画です。しかし、こちらの作品は、クローズとは違って、昭和のにおいが色濃く出ています。懐かしいと思いながら観る人は多いと思います。また、現在、主人公と同じ年代の平成生まれの人たちであっても、楽しめる作品だと思います。
「まだまだや。生きてる限り、どっこい!本番はこれからや。負けたらあかんで。今おまえが考えてるもんと、人生は違う。戦こうていけー!好青年!」
これは、ラスト近くで、逃げ回るトシオに、カズヨシの祖母(タイヘイ夢路さん)が語るシーンです。これは、霊なのですが…。集約されている大事な言葉でもあるように思いました。
しかし、そんなに難しいことは考えず、楽しく笑って、スカッと元気になれる作品であると思います。映画『クローズZERO』を観た人は、この作品も、また、ちょっとレトロな時代感覚も含めて、楽しめると思います。
2007年12月04日
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